犬の歯磨きを嫌がるときのやり方|段階的な慣らし方と続けるコツ
犬が歯磨きを嫌がるときは、いきなり歯ブラシを入れず、口元に触れる練習から順に進めるのが近道です。指やガーゼ、ジェルを使った段階的な慣らし方、1回の時間の目安、褒め方、嫌がる原因と受診の目安をまとめました。よくある失敗と立て直し方も紹介します。
KEY POINTSこの記事のポイント
- いきなり歯ブラシを入れず、口元に触れる練習から指、ジェル、歯ブラシへと段階的に進めます。
- 1回は慣れても1〜2分程度を目安にし、犬が嫌がる前に終えることを大切にします。
- 急に嫌がるようになった、特定の場所を触らせないときは、口の中のトラブルの可能性も考えます。
犬の歯磨きは、毎日の口腔ケアの基本です。ただ、口の中を触られることに慣れていない犬にとって、歯ブラシはかなり違和感のある道具です。いきなり歯ブラシを入れようとして嫌がられ、そこで止まってしまう飼い主さんは少なくありません。
うまくいく家庭の多くは、歯磨きを「口元を触られても平気になる練習」から始めています。この記事では、嫌がる犬でも進めやすい段階的な慣らし方と、続けるための工夫をまとめます。
犬が歯磨きを嫌がるおもな理由
嫌がる理由がわかると、どこから練習をやり直せばよいかが見えてきます。
- 口元や顔を触られること自体に慣れていない
- 押さえつけられた、急に口を開けられたなど、過去に嫌な経験がある
- 歯ブラシの毛先や味、においに違和感がある
- 1回の時間が長く、途中で疲れてしまう
- 歯や歯ぐきに痛みがある
最後の「痛み」は見落とされがちです。以前は平気だったのに急に嫌がるようになった、特定の場所だけ触らせない、という場合は、口の中にトラブルがある可能性も考えてください。
歯磨きを始める前に準備しておくこと
道具をそろえる
最初から全部をそろえる必要はありません。段階に合わせて次のものを用意します。
| 段階 | 使う道具 |
|---|---|
| 口元に慣れる | 飼い主さんの手、ごほうび |
| 歯に触れる | 指、ガーゼ、指サック型ブラシ |
| 味に慣れる | 犬用の歯磨きジェルやペースト |
| 本格的に磨く | 犬用の小さめの歯ブラシ |
歯ブラシは、口の大きさに合ったヘッドが小さいものを選ぶと扱いやすくなります。
時間帯とタイミングを決める
散歩のあとや、食後に少し落ち着いた時間など、犬がリラックスしている時間を選びます。興奮しているときや眠いとき、空腹で落ち着かないときは避けたほうが進めやすいです。毎日同じ流れで行うと、犬も次に何が起きるかを予測しやすくなります。
段階的な慣らし方の手順
各段階は、犬が嫌がらずにできるようになってから次へ進みます。数日で進む犬もいれば、数週間かかる犬もいます。
ステップ1 口元に触れる
なでるついでに、口のまわりや頬、あごの下に軽く触れます。触れたらすぐに褒めて、ごほうびを少しあげます。数秒で終わらせ、犬が「触られてもいいことがある」と感じる経験を重ねます。
ステップ2 唇をめくって歯を見る
口元に触られても平気になったら、上唇を軽くめくって前歯や犬歯を見ます。口を無理に開ける必要はありません。数秒見たら手を離して褒めます。
ステップ3 指やガーゼで歯に触れる
指にガーゼを巻くか、指サック型のブラシをつけて、犬歯や奥歯の外側を軽くなでます。歯の外側、特に歯と歯ぐきの境目に歯垢がたまりやすいといわれています。最初は1〜2本だけで終わらせて構いません。
ステップ4 ジェルの味に慣れる
犬用の歯磨きジェルを指先に少しのせ、舐めさせます。好みの味だと、歯磨きの時間そのものを楽しみにしてくれることがあります。慣れてきたら、ジェルをつけた指で歯の表面をなでます。
ステップ5 歯ブラシに切り替える
歯ブラシにジェルをつけて舐めさせるところから始めます。次に、犬歯の外側を1〜2回やさしく動かします。力は入れず、毛先を歯と歯ぐきの境目に当てて小刻みに動かすイメージです。前歯、犬歯、奥歯と、磨ける範囲を少しずつ広げていきます。
1回の時間と褒め方のコツ
最初のうちは、1回あたり数十秒で十分です。慣れてきても、全体で1〜2分程度を目安にすると、犬も飼い主さんも負担が少なく続けやすくなります。
大切なのは、犬が嫌がる前に終えることです。嫌がってから終えると「嫌がれば終わる」と覚えてしまうことがあります。「今日は奥歯まで届かなかった」という日があっても、楽しく終われたなら十分な進歩です。
褒めるときは、声をかける、なでる、小さなごほうびをあげるなど、その犬が喜ぶ方法を選びます。歯磨きのあとにお気に入りの遊びを入れるのもよい方法です。
よくある失敗と立て直し方
- 押さえつけて磨く 一度嫌な経験をすると、口元に触れるだけで逃げるようになることがあります。ステップ1に戻ってやり直してください。
- 一度に全部の歯を磨こうとする 範囲は日ごとに分けても構いません。今日は右側、明日は左側という進め方もあります。
- 力を入れすぎる 歯ぐきを傷つけると痛みで歯磨きを嫌がる原因になります。毛先が軽く当たる程度で十分です。
- 間隔があいてしまう 数日あくと慣れが戻ることがあります。短時間でもよいので、毎日触れる習慣を残すと再開しやすくなります。
歯磨きで落とせるもの、落とせないもの
歯磨きで落とせるのは、歯の表面についたやわらかい歯垢です。歯垢が時間とともに硬くなった歯石は、歯ブラシでは落とせません。
歯磨きは、きれいになった状態を保つためのケアと考えてください。歯石がある場合は一度動物病院で口の中を診てもらい、そのうえで毎日の歯磨きを続けるのが現実的な進め方です。
今日からできること
今日はまず、口元に数秒触れて褒めるところから始めてみてください。それが平気になったら唇をめくる、指で歯に触れると、1段階ずつ進めます。
歯ブラシを嫌がる段階では、ANIMAL DENTIST(犬用歯磨きジェル)のような犬用ジェルを指で使い、味に慣れてもらうのもひとつの方法です。どの道具を使う場合も、口の中に気になる様子があれば、自宅ケアと並行して動物病院で相談してください。
よくある質問
犬の歯磨きはどのくらいの頻度で行えばよいですか。
理想は毎日です。歯垢は時間がたつと硬い歯石に変わり、歯ブラシでは落とせなくなるため、間隔をあけないことが大切です。毎日が難しい場合でも、できる日を少しずつ増やすことから始めてください。
人間用の歯磨き粉を使ってもよいですか。
使わないでください。人間用の歯磨き粉には犬が飲み込むことを想定していない成分や、強い清涼感のある成分が含まれていることがあります。犬用として販売されているものを選んでください。
成犬になってからでも歯磨きに慣れますか。
時間はかかることがありますが、段階を踏めば慣れる犬は多くいます。子犬のときより一段階ずつの期間を長めにとり、嫌がる前に終えることを意識してください。
歯磨きの途中で出血しました。続けてよいですか。
一度中断し、出血が続く、繰り返す、歯ぐきが赤く腫れているといった場合は動物病院で相談してください。歯ぐきに炎症がある状態でこすり続けると痛みが出て、歯磨き自体を嫌がる原因にもなります。
参考情報
- 犬と猫の口腔ケアに関する飼い主向け情報(AVMA (American Veterinary Medical Association))
- 犬と猫のデンタルケアガイドライン(AAHA (American Animal Hospital Association))
- ペットの歯と口の健康に関する情報(日本小動物歯科研究会)
この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりになるものではありません。体調の変化や気になる症状があるときは、早めにかかりつけの獣医師にご相談ください。 執筆:あにまる製薬 編集部