犬の歯周病の症状とサイン|進行段階ごとの変化と受診の目安
犬の歯周病は、初期には目立つ症状が少なく、気づいたときには進んでいることがあります。歯ぐきの赤みや口臭など初期のサインから、歯のぐらつきや顔の腫れまで、段階ごとの変化と自宅でできるチェック、動物病院を受診する目安をまとめました。治療の判断は獣医師が行います。
KEY POINTSこの記事のポイント
- 歯周病の初期は歯ぐきの境目の赤みや口のにおいなど変化が小さく、見逃されやすい時期です。
- 月に一度、唇をめくって歯ぐきの色や歯の汚れを確認し、写真を残すと変化を比べやすくなります。
- 出血や顔の腫れ、歯のぐらつき、食べにくそうな様子があるときは、動物病院に相談する目安になります。
歯周病は、犬の口の中のトラブルとしてよく知られた病気です。ただ、初期には目立った症状が少なく、犬も痛みを隠しがちなため、飼い主さんが気づいたときには進んでいることがあります。
この記事では、歯周病がどのように進むのか、それぞれの段階で見られやすいサイン、自宅でのチェック方法と受診の目安をまとめます。治療の判断は獣医師が行うものなので、ここでは「早めに気づく」ことに焦点を当てます。
犬の歯周病とはどんな状態か
歯周病は、歯垢の中の細菌によって、歯ぐきや歯を支える骨などの組織に炎症が起きる病気です。歯ぐきだけに炎症がある状態を歯肉炎、炎症が歯を支える組織まで広がった状態を歯周炎と呼びます。
成犬の多くに歯周病がみられるといわれています。特に小型犬は、口の大きさに対して歯が密集しやすく、歯垢がたまりやすい傾向があるといわれています。
進行段階ごとに見られるサイン
歯周病の進み方には個体差があります。ここでは見られやすい変化を、おおまかな流れとして紹介します。実際にどの程度進んでいるかは、獣医師の診察で判断されます。
初期:歯ぐきの炎症
- 歯と歯ぐきの境目が赤くなる
- 歯の表面に歯垢や薄い歯石がつき始める
- 口のにおいが以前より気になる
この段階は歯肉炎と呼ばれる状態で、見た目の変化は小さく、見逃されやすい時期です。
中期:歯を支える組織への広がり
- 歯ぐきが腫れる、触ると出血する
- 歯石が目立つようになる
- 口臭が強くなる
- 歯と歯ぐきの間にすき間ができる
炎症が歯を支える組織に広がり始めると、もとの状態に戻すことが難しくなるといわれています。
進行期:歯のぐらつきや痛み
- 歯がぐらつく、抜ける
- 歯ぐきが下がり、歯の根元が見える
- 片側だけで噛む、硬いものを避ける
- よだれが増える、口元を触られるのを嫌がる
さらに進んだ場合
炎症が歯の根の周りで広がると、目の下や頬が腫れる、皮膚に穴があいて膿が出る、といった症状が出ることがあります。小型犬では、あごの骨に影響が及ぶ場合もあるといわれています。
自宅でできる歯周病のサインチェック
月に一度でもよいので、決まった日に口の中を確認すると変化に気づきやすくなります。無理に口を開けず、唇をめくって見える範囲を確認してください。
| チェック項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 歯ぐきの色 | 境目が赤くなっていないか、腫れていないか |
| 歯の表面 | 黄色や茶色の汚れがついていないか |
| 口のにおい | 以前より強くなっていないか |
| 歯の状態 | 欠け、ぐらつき、抜けた歯がないか |
| 食べ方 | 片側で噛む、食べこぼしが増えた、硬いものを避ける |
| しぐさ | 口元を前足でこする、触られるのを嫌がる |
スマートフォンで歯の写真を撮っておくと、前回との違いを比べやすく、受診時に獣医師へ見せることもできます。
犬が痛みを見せにくい理由
犬は口の痛みがあっても、普段どおり食事をとることがよくあります。そのため「食べているから大丈夫」と判断すると、変化を見逃すことがあります。
食べる速度が遅くなった、ドライフードを丸飲みするようになった、おもちゃで遊ばなくなったといった小さな変化も、口の不快感が関係している場合があります。
歯周病が見つかりやすいタイミング
歯周病は少しずつ進むため、「いつもの状態」と比べられるかどうかで気づきやすさが変わります。次のようなタイミングを、口の中を見る機会として活用してください。
- ワクチン接種や健康診断のとき 口の中も見てほしいと一言伝えるだけで、確認してもらえることが多いです。
- トリミングのあと 顔まわりがすっきりして、歯や歯ぐきが見やすくなります。
- 歯磨きの時間 毎日歯に触れていると、出血や痛がる場所の変化に気づきやすくなります。
- 食べ方が変わったとき フードを残す、時間がかかるといった変化は、口の中を確認するきっかけになります。
小さな変化でも、気づいた日付と内容をメモしておくと、受診したときに獣医師へ伝えやすくなります。
動物病院で行われること
動物病院では、口の中の視診に加えて、必要に応じて全身麻酔下での詳しい検査やレントゲン撮影が行われます。歯周病の程度によって、歯石の除去、歯周ポケットの清掃、抜歯などの処置が検討されます。
どの処置が必要かは、口の中全体と体の状態をみて獣医師が判断します。麻酔への不安や費用については、受診時に遠慮なく相談してください。
歯周病を意識した毎日の口腔ケア
動物病院での処置のあとや、まだ大きな変化がない時期には、口の中を清潔に保つ毎日のケアが中心になります。基本は歯ブラシでの歯磨きで、歯と歯ぐきの境目の歯垢を落とすことを意識します。
歯磨きの進め方は犬の歯磨きのやり方で、すでに歯石がある場合の考え方は犬の歯石の取り方と自宅ケアの限界で紹介しています。
今日からできること
今日はまず、唇をめくって歯ぐきの色と歯の表面を確認してみてください。赤みや腫れ、硬い汚れが見つかったら、動物病院で口の中を診てもらうのが確実です。
気になる様子がなくても、健康診断のときに口の中も見てもらうよう伝えておくと、早めに変化に気づくきっかけになります。
よくある質問
歯周病は自宅のケアで治せますか。
歯周病の診断と治療は動物病院で行うものです。自宅での歯磨きは、口の中を清潔に保つための毎日のケアであり、すでに起きている炎症や歯を支える組織の変化を治すものではありません。気になる症状があれば受診してください。
歯周病はどのくらいの年齢から気をつければよいですか。
成犬になってからは年齢にかかわらず注意が必要です。特に小型犬は歯が密集しやすく、歯垢がたまりやすい傾向があるといわれています。若いうちから口の中を見る習慣をつけておくと、変化に気づきやすくなります。
犬が普通にごはんを食べていれば、歯周病の心配はありませんか。
犬は口の痛みがあっても、食欲を保ったまま食べ続けることがあります。食べているから大丈夫とは言い切れないため、歯ぐきの色や口臭、食べ方の変化もあわせて確認してください。
歯周病の治療ではどんなことをしますか。
口の中の状態によって異なりますが、全身麻酔下での歯石除去や歯周ポケットの清掃、必要に応じた抜歯などが行われます。具体的な内容は、診察した獣医師から説明を受けてください。
参考情報
- 犬と猫のデンタルケアガイドライン(AAHA (American Animal Hospital Association))
- 犬と猫の歯科に関するガイドライン(WSAVA (World Small Animal Veterinary Association))
- ペットの歯と口の健康に関する情報(日本小動物歯科研究会)
この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりになるものではありません。体調の変化や気になる症状があるときは、早めにかかりつけの獣医師にご相談ください。 執筆:あにまる製薬 編集部